椎間板脊椎炎、椎間板ヘルニアと脊椎亜脱臼の合併症について(Part1)

2015年10月02日

今回は8月から治療をしている、

12歳のトイ・プードル、トラちゃん(男の子)についてご紹介いたします。

前日の夜に急に立てなくなってしまい、排便・排尿困難とのことで来院されました。

来院されたときは、

重度のショック状態であり、播種性血管内凝固(DIC, Disseminated Intravascular Coagulation )

といって、体中のあちこちで微小な血栓を作ってしまっているような状態でした。

まずは迅速な輸液療法を含めた対症療法を行い、なんとか一命を取り留めました。

 

そこで、容態が落ち着いたところでその原因追及を行ったのですが、

順序立てて検査をしていく内に大変な病気だということが判明しました。

まず、起立・歩行不可であり排便・排尿困難という主訴(飼い主様が最も強く訴えたい主な症状のこと)から、経験がある臨床家であればこの時点でピーンと来なくてはなりません。

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   常に後肢を引きずっておりました

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   座るとこんな姿勢になってしまいます

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  自分の意志で排泄ができないためにオムツがないと生活ができません

 

また症状が甚急性に発症していることと意識がしっかりしていること、それからこの症状の組み合わせであれば、恐らく脊髄疾患であろうと予想がつきます。

ただしこの子の難しさとしては、なぜDICになるような重度のショックを起こしてしまったのかということと、この大きな症状が出る1週間前から食欲不振と下痢が続いていたということです。

 

『脊髄の病気?じゃあCT検査なりMRI検査をすればすぐに分かって良いんじゃないの?』

って考える方が今の世の中には非常に多いですが、それはいかにもナンセンスだと思います。

いつも思うのは、

院内でできる簡便だけど基本的な検査をまずは系統立てて行う

それらによりしっかりと当たりを付けた上で大きな検査をする

でなくては的外れとなり、その結果として動物の状態が悪くなるばかりか、

無駄な検査をして莫大な費用がかかり、飼い主様のお財布を圧迫することとなるでしょう。

 

さてこの子の場合はというと、

血液検査をして全身状態を確認

 神経学的検査にて脊髄神経のどこの部位(脊髄分節)からくる症状なのかを特定

①と②で得られた結果より、異常がありそうな箇所のレントゲン検査

総合的に判断して、院外検査で何が必要かをリストアップ

これらをもとに今後についてのご希望を飼い主様としっかりお話し合い

今回は、

  精密検査としてさらなる血液検査を外部検査機関

  CTおよびMRI検査を岐阜大学動物病院

にて行うこととなりました。

様々な系統立った検査の結果、、、

診断はというと、

『椎間板脊椎炎と

   それに伴う脊椎の亜脱臼および椎間板ヘルニア』

となりました。

なんだか小難しい内容だな〜と思ったかもしれませんので少し説明いたします。

まず椎間板脊椎炎とは?

何らかの原因で、『椎間板に細菌感染が起こりそれに隣接した脊椎の骨髄炎が同時に起こること』と定義されております。

このトラちゃんは椎間板の感染が全身に広がり、それによって来院されたときには既に敗血症を起こしており、大変危ない状態だったと言えます。

すごく珍しい病気ではないですが、そうしょっちゅう遭遇するような病気ではありません。

さらに珍しいのはこの椎間板脊椎炎による骨髄炎の影響で、

脊椎が亜脱臼してしまったのと椎間板ヘルニアを起こしてしまっていたということです。

実際の検査画像を添付しながら説明いたしますね。

梅村とら(椎間板)

この画像だけではよく分かりませんよねf(^^)

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まず上図が模式図です。

梅村とら(椎間板2)

白く見える骨と骨の間に、体の中で最も太い神経である脊髄神経(=黒く長い部分)が通っています。

その下側が背骨で、椎間板脊椎炎により背骨の間にあるクッションの役割を果たしている椎間板が炎症を起こして背骨(=脊椎)を破壊しています。

その結果として、背骨の不安定性(=亜脱臼)が起きてしまい、それをなんとか自己防御能力で支えようと体が勝手に働いて、カニの爪のような形をした骨が出ています(=変形性脊椎症)。

そして、炎症が起きたことによって椎間板が脊髄神経の方へと飛び出てしまい、脊髄神経を圧迫しています(=椎間板ヘルニア)。

専用のソフトで3D画像を作成してみたのでしたのでご覧ください。

梅村とら 3D VR 像 梅村とら 3D VR 像 2

これらによりトラちゃんは起立・歩行不可と排尿・排便困難を呈していたのです。

さあここからが大変です!

ではどうやってこの病気を治療をしたら良いのでしょうか???

次回Part2では治療についてご紹介いたしますので、

乞うご期待、暫くお待ちくださいm(_ _)m